今日は神様からのプレゼント

神様と共に今日を生きる

星野富弘さんが召されました

  

 口に筆を加えて1000点もの詩歌を残された星野富弘氏が78歳で亡くなられたことはそれに続いたフジコヘミング女史の死去とともに、時代の変遷を感じさせるニュースでした。


 何年か前、サンフランシスコ講和条約50周年記念の年、その記念行事の一環として星野富弘氏の詩画展がサンフランシスコで行われたことがありました。富弘展はその後、ロサンゼルスでも開かましたが, サンフランシスコにはご本人の星野富弘さんと奥様の昌子さんがいらっしゃることができたのです。
 私は幸いなことに、ある雑誌社から記事を頼まれていたので、連日のように星野さんにお会いすることができました。


 お二人は海外旅行はハワイ以外初めてだとのこと。なにしろ、首から下は麻痺しているので、旅行といってもそう簡単にはいきません。昌子さんがいなければ、食べることひとつできないし、毎日、周りの者がつきそって首から下の体操をしなければ、身体が萎えて結核になってしまうということでした。


 あの美しい詩と画は、きれいごとで、できているのではありません。
 時差ボケも影響なくお元気そうで、その健康のもとは毎日の電動車椅子での散策にあるということでした。柔和そのもののご夫妻で、富弘さんは、ユーモアにあふれた方でした。


 英語の練習をしてきたというので、それを使わなければという私たちに「散歩するときにだけ、犬に向かって英語で話すんです。そうすると、犬がワンダフルといってくれるんです」という調子。


 どうして花を描くかというと、花は動物と違って動かないし、枕元にもってきて描くことができるからということでした。もっとも動物でも、豚の絵だけはよく描いているという理由は、豚はいっしょに育ったので、目をつぶってでも描けるのだそうです。


「もっとも、近くに豚のような者がいますし」とさりげなく周りをなごやかな笑いに包みました。ちなみにその豚の絵には上でごらんになるように、こんな詩がそえられています。
「何だってそんなにあわてるんだ。早く大きくなって何が待っているというんだ。子豚よ、そんなに急いで食うなよ。そんなに楽しそうに食うなよ。」
 けれど、決して彼とて、いつもこんなに穏やかでいたわけではないそうです。


「なによりも私を生かしてくださっている神様の愛に気づかされたことが、大きな変化でした。」と開幕式のスピーチで話されました。


「他人は障害をもった人を見ると大変でしょうにとかかわいそうに思うようですが、案外慣れてしまうとそんなことはないのです。みなさん、泳いでいる時におしっこをしたことがあると思いますが、自分が泳いでいて、おしっこをしても全然、汚いと思わない。でもいざ、プールサイドに立ってそのプールを見ると飛び込む気がおこらない。変な例ですが、それと同じで、障害者は、傍から見るとかわいそうに見えるかもしれませんが車椅子生活に慣れるとそれも案外楽なものです。よくお客さんと一緒に散歩するのですが、私は車椅子だから、なんともないのに、長く歩くとお客さんの方は、はあはあ言ってくるんです」
「肉体の障害は乗り越えられます。けれど一番、やっかいなのは心の障害です」



 私が大好き作品はこの本の題にある鈴の鳴る道です。車椅子にとりつけた鈴はでこぼこ道に差し掛かるとよい音を鳴らす。私達の人生も神様の声がきけるのは困難に出会ったまさにその時だという、素晴らしい詩です。


 富弘さんは召されましたが、残された1000点の詩画がこれからも私達に生きる希望と勇気を与え続けてくれることでしょう。



星野富弘さん死去 78歳 口に筆くわえ詩画描く活動 約1000点作品残す富弘美術館にあすから記帳所|
TBS NEWS DIG


竹下弘美

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